劇画

辰巳ヨシヒロによる劇画工房ご案内「劇画宣言」全文

劇画ファンには有名な、辰巳ヨシヒロによる「劇画工房ご案内」。

「劇画宣言」といわれ、漫画家や出版社、新聞社に送ったハガキに書かれた文章です。





手塚治虫が作り上げた子供向けの「漫画」という世界に対する、大人向けのストーリー漫画を「劇画」と呼ぶ! という辰巳ヨシヒロさんの思いがつまった文章です。

「劇画宣言」は日本の劇画の歴史のみならず、世界の漫画の歴史においても重要な文章です。

wikipediaにも掲載されていますが、10文字近く誤植がありました。

ネット上にテキストとして文章はあまり掲載されていませんので、ここに正式な文章を記載します。

劇画工房ご案内
常に世の中は移りつつあります。鳥羽僧正に端を発したといわれる漫画界も日進月歩、昭和になつて大人漫画と子供漫画とジヤンルが二分され、大人漫画の中でも政治漫画、風俗漫画、家庭漫画、ストーリー漫画と樹枝の如く、それぞれ方向を異とするものにわかれました。
子供漫画の世界でも同じく、その読者対象によつてその分野が広がりました戦後、手塚治虫氏を主幹とするストーリイ漫画が急速に発達し、子供漫画の地位が向上、進歩の一途をたどりました。
最近になつて映画、テレビ、ラジオにおける超音速的な進歩発展の影響をうけ、ストーリイ漫画の世界にも新しい息吹きがもたらされ、新しい樹が芽をふきだしたのです。
それが“劇画”です。
劇画と漫画の相違は技法面でもあるでしようが、大きくいつて読者対象にあると考えられます、子供から大人になる過度期においての娯楽読物が要求されながらも出なかつたのは、その発表機関がなかつたことに原因していたのでしよう。劇画の読者対象はここにあるのです。劇画の発展の一助は貸本店にあるといつてもいいと思います。
未開拓地“劇画”
劇画の前途は洋々たるものがあります。それだけに多苦多難なこともありましよう。ここに望まれるのは劇画ライターの一致協力です。
この主旨にもとずいて、このたびTS工房、関西漫画家同人、劇画工房が合併、同志の劇画ライターが協力、新しいシステムによつて劇画工房なる機関が発足しました。
劇画工房のあり方というものを理解下さつて諸兄のご声援をお願いします。
劇画工房 さいとうたかを 佐藤まさあき 石川フミヤス 桜井昌一
辰巳ヨシヒロ 山森ススム K・元美津

このハガキが発送されたのは、1959年(昭和34年)です。

松本正彦の名前がありませんが、当時は日の丸文庫の山田秀三社長にとめられたこともあり、劇画工房に参加するのは後になります。

当時の劇画工房のメンバーの年齢は、

桜井昌一…26歳

辰巳ヨシヒロ、山森ススム、K・元美津…24歳

さいとうたかを…23歳

佐藤まさあき、石川フミヤス…22歳

皆、若く、文章から熱気が伝わってきます。

「劇画の発展の一助は貸本店」という文章からは、当時の貸本屋と劇画の密接な関係が伺えます。

「劇画宣言」は当時の劇画家の熱さと、貸本業界のことをうかがえる、貴重な文章です。





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