出版基礎知識

出版業界の現状と課題│今後の解決策も元大手出版社の営業が解説

出版業界の売上は1996年をピークに、20年以上、下落し続けています。

それでも大手3社(小学館、集英社、講談社)の社員は30代で1,000万円を超える年収をもらっています。

出版業界は現在、どのような状況で、今後はどうなっていくのか?

元大手出版社で営業管理職を務めた筆者が、内部事情を踏まえて解説します。





出版業界の現状と課題

出版業界を支えていたのは、雑誌です。

週刊誌や月刊誌の雑誌が生活の一部だった時代も、以前はありました。

昭和です。

どの家庭も週刊朝日や週刊文春、子どもなら週刊少年ジャンプやマガジンを読んでいました。

いまは雑誌がまったく売れません。

電車の中で雑誌を持っている人は、皆無です。

売れないといっても、週刊少年ジャンプの発行部数は160万部、マガジンは70万部ありますが、サンデーは25万部です。

休刊目前といっていいでしょう。

総合週刊誌では、週刊文春57万部、新潮39万部、現代38万部、ポスト34万部です。

週刊朝日は11万部、サンデー毎日7万部、AERAにいたっては7万部を割っています

全盛期の1/10以下という雑誌もあります。

では書籍の売上はどうかというと、出版業界全体でいうと、雑誌と同じく下がり続けています。

ただ、書籍はヒット作が出れば出版社の経営に大きな効果をもたらします。

1,500円の本が100万部のベストセラーになれば、出版社には定価の70%の収入が

入ってきます。

1,500円×100万部×70%=10億5千万円

この額は、中堅出版社は100億円前後の年商なので、その1割を一つの作品によって
稼げてしまうのです。

出版業界が博打と言われる所以です。

100万部と言わないまでも、10万部規模のヒットはどの出版社からも出ているので、売上が下がり続けている中でも、やっていける状況なのです。

課題はここです。

10万部のヒットがでれば、なんとかやっていけてしまうということです。

機械メーカーなどは、外資の攻勢に一気にやられました。

シャープは台湾の鴻海(ホンハイ)に、NECと富士通のパソコンはレノボに買収されました。

出版業界は外資という黒船が入ってこないうえ、数年に一度のヒットで食いつなげてしまうのです。

綿で首を絞めるというのはこのことを言います。

ほとんどの出版社は売上が毎年、数%下がりますが、定年になった社員が退職していくので人件費が下がります。

出版社は工場を持ちませんので、人件費がかなりのウェイトを占めます。

売上は下がるけど固定費も下がる。

そしてたまにヒットが出て売り上げに寄与する。

危機感を持てない構造になっているのです。

出版業界の今後と解決策

出版業界の売上はこの20年間で、約半分になりました。

ではこれからの10年、20年でどうなっていくのか? と考えると、電子書籍が売り上げを補填してくれることは考えにくいです。

電子書籍の定価は紙の本より安いことも原因です。

また、紙の本や漫画の売上の下がった分を電子書籍が補うことはありますが、プラスにすることはありません。

では出版業界の明日が見える解決策はないのか?

ひとつの光明は、海外です。

児童書のポプラ社は2004年に中国に進出しています。

中国事業は赤字でしたが、現在は売上が20億円に迫っています。

同社の日本の売上は74億円です。日本市場での売上が大きく伸びない中、中国の売上が日本を上回ることも現実的になってきました。

日本の児童書のコンテンツが中国で受け入れることをポプラ社が証明してくれました。

朝日新聞出版の「サバイバルシリーズ」は学習漫画で、800万部を超える超ベストセラーですが、韓国で出版されているものを翻訳したものです。

アジア圏での子供向けコンテンツは、一つの国で売れれば他の国に展開できるのです。

児童書に強い出版社は、海外展開次第で新しい売り上げを作ることができそうです。

ただ、一般書籍を海外で展開して売れるかというと、一部の小説やコンマリこと近藤麻理恵さんの「人生がときめく片付けの魔法」が受け入れられるぐらいで、なかなか現状突破が見えていません。

これからの10年、20年、売上がさらに半分になることは覚悟した方がいいでしょう。

つまり、現在は黒字の出版社でも、人員整理や給与削減が目に見えているということです。

倒産する出版社も多く出てくるでしょう。

まとめ

・雑誌は全盛期の1/10以下の売上のタイトルも

・書籍は10万部のヒットがでれば出版社の経営を救う

・たまのヒットが出版社の経営を、真綿で首を締めている

・電子書籍が出版業界全体の売上を伸ばすことはない

・ポプラ社の中国での成功が光明