出版

貸本漫画 白土三平「忍者武芸帳 影丸伝」(三洋社)の発行部数

白土三平の代表作のひとつである「忍者武芸帳 影丸伝」は、長井勝一社長の三洋社から1959年(昭和34)に発売されました。全17巻です。





60年以上も昔の漫画ながら、今も読み継がれている傑作です。

小学館は1966年(昭和41)にゴールデンコミックスで「忍者武芸帳 影丸伝」を発売したのを皮切りに、愛蔵版、小学館文庫、小学館叢書等で何度も復刻をさせています。

直近ではコンビニ向けの廉価版コミックを全6巻で、2014年(平成26)に出版しているほどですから、今も続く人気に驚きます。

三洋社が出版した際は貸本でしたが、どれぐらいの部数が出版されたか、以下の本に記述があります。

長井勝一社長の著書『「ガロ」編集長 私の戦後マンガ出版史』(ちくま文庫)です。

『当時、日の丸文庫が「影」という雑誌形式の単行本で九千部を出していたというが、これは特殊な例で、単行本だったら二、三千部というのが相場だった。四千出たら、大人気の作家というのが業界の常識だったのである。それに対して「忍者武芸帳」は六千である。」

「影」は複数の作家が描いている、雑誌のようなものです。

その著者人も豪華で、さいとう・たかを、辰巳ヨシヒロ、佐藤まさあき、松本正彦、桜井昌一と著名な劇画家が目白押しです。

複数の作家の作品が読める「影」に対して、「忍者武芸帳」は著者が一人です。

6,000部というのは、長井勝一さんが同書で、

「それにしても常識はずれだったということは間違いない。失敗すればヒドイことになるのは眼に見えているような大冒険である。」というほどの部数だったのです。

しかし資料では、長井勝一さんの奥さんで一緒に仕事をしていた香田明子さんは、八千部とおっしゃっていました。

正確な部数は資料も残っていないので、定かではないのでしょう。

というのも、出版社の部数の管理についてです。

私は大手出版社に10年間勤めていましたが、ほんの30年ほど前の本の発行部数を調べようと思っても、うまくいきませんでした。

初版部数はなんとか資料が残っていても、重版を何度したのかというのを調べようとすると、資料が残っていなかったのです。

三洋社は、貸本版元です。

貸本版元と一般的な出版社には、作家に払う原稿料について、大きな違いがあります。

一般的な出版社は、「印税」を著者に払います。

「印税」は印刷した部数に対して支払われ、重版をすれば印税も増えます。

しかし貸本は印税とは言わず、「原稿料」です。

「原稿料」は漫画の原画と引き換えに渡す金額です。

貸本ではそれほど重版をすることがなかったと聞きますが、重版をしても著者に追加でお金は支払わないのです。

つまり、部数の管理をする意味があまりないのです。

藤子不二雄や石ノ森章太郎、赤塚不二夫が漫画家を目指すきっかけとなった手塚治虫の「新宝島」の原稿料の話が、当時の事情を如実にあらわしています。

「新宝島」は戦後すぐの1947年(昭和22)に育英出版からでた「赤本」です。

戦前に流行った「のらくろ二等兵」(田川水泡)といった漫画とは一線を画す表現方法で、一代センセーションを巻き起こしました。

発行部数は重版を重ねに重ね、40万部とも、80万部ともいわれています。

では手塚治虫が受け取った原稿料がいくらかというと、はじめの原稿料の3,000円のみです。

当時の公務員の初任給が2,000円ほどでしたので、なかなかの額ですが、40万部を売ったことを考えると寂しいものです。

ちなみに、現在の印税ですと、例えば1,500円の単行本が40万部のベストセラーとなると著者の印税は、

1,500円 × 印税10% × 40万部 = 6,000万円

なんと印税額は6,000万円です!

話がそれましたが、当時の貸本や「忍者武芸帳」の部数については、あらたな情報があればまたブログを更新します。

過不足や間違えている点がありましたら、コメントを残してもらえると幸いです。





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