出版社の仕事

本・書籍の新聞広告は効果がない!?全15段など枠の大きさや曜日で変わるのかを解説

新聞広告がインターネット広告に抜かれたのが2009年。

2000年に1兆2,400億円あった新聞広告費は、2018年には4,700億円にまで落ち込みました。

実に、全盛期の1/3程度しかないのです。

出版社や著者の間の常識としては、新聞に本の広告を載せてもほとんど効果がない、ということです。

本当にそうなのか?

全15段など枠の大きさや曜日によって効果が変わるのかも、元大手出版社の営業で、新聞広告を実際に使っていた経験を書きます!





本の新聞広告の効果は「ほとんど」ありません

朝日新聞や日本経済新聞新聞などの全国紙の一面下には、必ず本の広告が載っています。

サイズはサンヤツ(3段1/8)です。

二面や三面の広告も、本や雑誌の広告枠です。

朝日や日経、読売、毎日などの全国紙は、この枠を本の専用にしています。

本以外の広告は載せないのです。(地方紙は別です)

しかし、全国紙の一面に本の広告を載せてもほとんど効果がないのです。

出版社の営業は、広告が載る前後で売り上げにどれだけ効果があるのか? ということを測定しています。

最も多くの出版社が使っているのは、紀伊國屋書店の全店での売上が分かるPubLineというシステムです。

紀伊國屋書店は全国に約70店舗あり、シェアも大きいので、効果測定に適しているのです。

で、広告を掲載後のPubLineの動きをみると、掲載前の売上冊数とほとんど変わらないというのが、よくあることなのです。

また、アマゾンのランキングは出版社も著者も注視しています。

本の新聞広告の効果があった例

すべての広告が効果がないわけではありません。

新聞広告の効果によって、PubLineの売上が前日より100冊以上伸び、アマゾンのランキングが10,000位台からTOP100にジャンプアップすることもあります。

広告効果が顕著に表れた例では、震災関連の本です。

2011年の東日本大震災や2016年の熊本地震が起きた際は、新聞社系の出版社が報道写真集を出版し、新聞に広告を載せました。

震災の後は皆、新聞をいつもよりしっかりと読みますし、情報を欲しがっているので報道写真集のニーズも高いのです。

他に効果があるのは、朝日新聞を嫌う層をターゲットとした新聞広告です。

産経新聞は反朝日新聞を記事でも克明に書きますし、主張も右と左で逆です。

産経新聞の読者は反朝日新聞の人が多いので、「朝日新聞がなくなる日」といった本の広告は顕著に効果があります。

アマゾンのランキングが3,000位台から100位台まで登りあがったのを覚えています。

これらは新聞との相性がいい本で、滅多にない例です。

その他、売れている本に関しては、広告効果はあります。

テレビで取り上げられて売り上げが伸びた本は、新聞広告を使うことにより、さらに売り上げを伸ばすことができるのです。

つまり、書店に陳列してもあまり売れない本が、新聞広告によって売れるようになる、ということがないのです。

効果がなくても新聞広告を出版社が使う理由

では、出版社は効果がほとんどない新聞広告をなぜ、使うのでしょうか。

大きく分けて3つ、理由があります。

一つ目は、新聞広告以外、宣伝する媒体がないということです。

テレビのCMは値段が高すぎて手が出ないですし、雑誌広告は安いのですがまったく効果がありません。

インターネット広告も、本とは相性が良くないのです。

二つ目は、書店へのPRです。書店から注文をもらって店頭にしっかりと陳列してもらいたい場合、出版社はPR要素をいくつか用意します。

その中で新聞広告を載せる、というPRをすると、書店は注文せざるを得ないのです。

書店に来たお客様が「新聞広告に載っていたあの本」と言ってきたとき、在庫がありません、と書店は言いたくないからです。

三つめは、著者へのアピールです。とくに小説家に出版社は忖度しますが、「うちはあなたのことを大事に思っています。

だから広告もしっかり載せます」というアピールができるのです。

全15段より小さい広告でも効果がある時があります

全15段というサイズは、新聞の一ページ全てです。

全15段を出版社が使うのは、元日の新聞広告が毎年の恒例です。

最大手の小学館、集英社、講談社の3社は全国紙に必ず全15段広告を元日に載せますが、内容は出版社自体の広告で、本にフォーカスしない場合もあります。

全15段で一冊の本を広告したとしても、費用対効果は高くありません。

それより、半5段、全5段の方が効果が高い場合が多いのです。

全5段で一冊の本を広告する場合、その本は初版10万部を超えているような、売れるのが見込める本です。

小説家でいうと、東野圭吾さん、湊かなえさん、伊坂幸太郎さんといった超ベストセラー作家の本は、必ず全5段広告が掲載されています。

では、半5段以下の広告は全く効果がないかというと、そうではありません。

新聞には「生活面」があり、健康や医療などの暮らしにまつわる記事のみ載せています。

朝日新聞などは、生活面に7cm四方ぐらいの小さな広告枠があります。

この枠に料理のレシピ本や、往年の女優のエッセイの広告を掲載すると、読者層とマッチして、紀伊國屋書店での売上が100冊はアップしませんが、50冊ぐらい動くことはあるのです。

曜日によって広告効果は変わってきます

何曜日に新聞広告を掲載するのかは、出版社が決められない場合があります。

新聞は大きな事件が入ると、広告より記事にスペースを割くからです。

一般的に、本の広告で最も効果のある曜日は、土曜日か日曜日です。

それは、書評が掲載される曜日だからです。

朝日新聞と日本経済新聞は土曜日、読売新聞と毎日新聞は日曜日です。

本好きな新聞購読者は書評欄を読み、そこに本の広告があると、興味のある本を購入する確率が高くなるのです。

日本経済新聞は木曜日の夕刊文化面で「目利きが選ぶ3冊」というコーナーがあります。

このコーナーも人気があり、木曜日の日経の広告効果もあります。

その他、平日はゆっくりと新聞を読めないから広告の効果が薄い、という説もありますが、あくまで予想にすぎません。

新聞広告を何百本も出した経験から言えるのは、何曜日に広告を出すかより、売れる本は広告を出せばさらに売れ、売れない本は広告を出しても売れない、ということです。

【まとめ】

・新聞広告は、売れていない本を売れるようにする効果はありません

・書店で売れている本は、新聞広告の効果でさらに売り伸ばせます

・出版社が新聞広告を使う理由は、他にいい媒体がないということと対書店、著者という視点もあります

・新聞広告は大きな枠より、小さな枠の方が効果がある場合もあります

・新聞広告は書評が掲載される土曜日と日曜日に効果が高くなります