出版基礎知識

初版部数の平均を本と漫画の両方を解説!調べ方があるのかについても元大手出版社営業が紹介

幻冬舎の見城徹社長が、自社で発行した小説の初版部数と

実売部数を暴露して大炎上し謝罪に追い込まれました。

その部数は、初版5,000部で実売1,000部です。

幻冬舎という大きな出版社からだしている小説で、初版がたった5,000部なのです。

では、全体的な平均はどれぐらいなのでしょうか?

元大手出版社の営業が赤裸々に告白します!





「本」のジャンル別の初版部数の平均

本といっても、様々なジャンルがあります。

書店に入り口で陳列されているのは、小説とビジネス書が多いです。

エキナカの書店では、手軽に持てる文庫がよく陳列されています。

これらの3つのジャンルの初版部数の平均について紹介します。

「小説」の初版部数の平均

小説の実売部数は、悲惨なものがあります…

例えば10年前に芥川賞を受賞した大物作家がいたとします。

売れたのは受賞作のみで、それ以後はほとんどヒットがなかったとすると、

実売1,000部というのは、かなり現実的なラインです。

では書店で1,000部売れたかというと、この場合だと書店では200部ぐらいです。

では残りの800部はどこで売れたのかというと、全国の図書館です。

図書館は過去に大きな賞を受賞した作家の本は、必ず仕入れるのです。

1,000部しか売れない本でも出版社は、初版で4,000~5,000部作ります。

本当は1,500部でも2,000部でもいいのですが、こんな部数では

著者に印税がほとんど入らなくなります。

本当に1,500部しか印刷しなかったら、その噂が著者の間で飛び交い、

あの出版社からは本を出すのはやめよう、となってしまいます。

ではそもそも、1,000部しか売れない作家の本はださなければいい、

と思われるかもしれません。

なぜ出すのか? 出版社が博打気質の商売だからです。

100冊の本を出版して、1冊でもヒットすればいい、という感覚なのです。

それに、一度ヒットしたことのある作家は、もう一度ヒットするかも

しれないのです。その確率は、全くの新人作家よりはマシなのです。

小説の平均初版部数は4,000部~5,000部といったところです。

「ビジネス書」の初版部数の平均

ビジネス書は図書館が購入してくれることが、あまりありません。

実売部数=書店で売れた部数です。

ですので、小説より、よりシビアになって出版社は作ります

それは企画段階からです。

平均的な初版部数は小説と同じ、4,000~5,000部です。

10,000部以上の初版は、ある程度名前の通った作家だけです。

堀江貴文さん(ホリエモン)の初版でも20,000部ぐらいなのです。

ただ、小説と違うのは企画内容によって、部数が大きくもなるのです。

小説の場合、作家にファンがついているので、基本的に

小説家によって部数が固定しています。

ビジネス書の場合、時流に乗った企画は部数を上積みできるのです。

例えば、トランプ大統領がファーウェイ(Huawei)を攻撃して

日本の携帯キャリアも発売を延期しました。

このタイミングで「トランプvsファーウェイの行方」という

タイトルの本を出せば、初版部数を上積みできるのです。

「文庫」の初版部数の平均

文庫の初版部数が、最も大きいです。

理由は二つあります。

一つ目は、よく売れるからです。文庫の基本は、単行本からの

文庫化です。単行本が売れたから文庫にするのです。

二つ目は、買いやすさです。それは値段が単行本より安い

ということと、スペースの狭いエキナカの書店などによく

陳列されるからです。購入の機会が多いのです。

最低初版部数は8,000部ぐらいです。

文庫を発行している出版社としては、書店の棚を気にすることもあります。

書店では、文庫のレーベルごとに棚を確保しています。

例えば新潮文庫で初版が4,000部ですと、棚を確保している書店の

ほとんどに、その文庫が入荷しない冊数になってしまうのです。

そこでの最低基準が、初版8,000部ぐらいなのです。

平均は12,000部~15,000部です。

「漫画」の初版部数の平均

漫画は「本」と比較して、よく売れているイメージを持たれています。

その理由のひとつは、漫画は「巻数」モノだからです。

「スラムダンク」は全31巻、「ドラゴンボール」は全42巻、ONE PIECEは2019年3月に

92巻が発売されています。

ちなみに、「ONE PIECE」の初版部数の最高は、67巻の405万部です。

「スラムダンク」の初版部数の最高は21巻の250万部、

「ドラゴンボール」は35巻の220万部です。

世界的アニメの初版部数がこれぐらいですので、世間で名前が知られていない漫画の

初版部数は、売れているイメージの漫画とはいえ、多くはないのです。

「週刊少年ジャンプ」や「週刊少年マガジン」の連載作品は別ですが、

あまり有名でない月刊漫画雑誌で連載していた作品の単行本は、

初版8,000部ということもあります。

漫画は売れているのと、売れていないものの差が大きいので、初版部数の

平均を出すことは難しいのですが、初版10,000部を切る作品も多くあるのです。

初版部数の調べ方

好きな作家の本の初版部数はどれぐらいなのか? ということは本好きなら

気になるところです。

初版部数が大きいと、出版社もその数字自体をプロモーションに使います。

村上春樹さんの新刊が良い例です。

2017年に「騎士団長殺し」を全2巻で発売した際には、初版部数を各巻50万部で

累計100万部とし、この情報をマスコミにリリースしました。

そしてテレビや新聞でも大きくニュースとして扱われ、売り上げを伸ばしたのです。

「ONE PIECE」も同様です。

56巻で285万部を発行し、57巻で300万部に達してからは、新刊が出るたびに

ニュース化しました。

58巻310万部ー59巻320万部ー60巻340万部ー61、62巻380万部ー63巻390万部ー

64~66巻400万部を突破し、67巻405万部と最高の宣伝になったのです。

大きく売れている本は初版部数を出版社も発表しますので、検索で知ることができます。

それ以外の、そこまで売れていない本の初版部数は、出版社も著者も発表することは

ありません。初版部数=著者に入る印税なので、発表にシビアにもなります。

では、書店員は知っているかというと、あくまで推測でしか知っていません。

勤めている書店に初版で50冊入荷したら、自店のシェアは0.1%だから、

50,000部だな、といったかなり曖昧なものです。

出版社に勤めている人も、自社の本の初版部数は把握していますが、

他の出版社の本の初版部数を知る術は、一つしかありません。

それは、初版部数が知りたい他の出版社の人に直接聞くのです。

もちろん、教えてくれないこともありますが、だいたいは教えてくれます。

初版部数を他の出版社に聞く理由は、例えば私が勤めていた出版社で

Aさんという作家の小説を出すことになり、初版部数を何部にするか

悩んだとします。そこで最も参考になるのが、Aさんが以前に出した本が

どれだけ売れていたか? ということなのです。Aさんの前の本が

初版10,000部で重版を2,000部していたら、新刊は12,000部の

初版にしよう、と考えられるのです。こういった情報は、出版社の

営業同士でよくやりとりするのです。

では、出版業界関係者の人が初版部数を調べる方法があるかというと、

無いのが現状です。

ただ、実売部数はオリコンが発表していて、かなり信頼のおける数字です。

こちらもランクインしている本のみの情報となってしまいますが。

まとめ

・初版部数はジャンルによって違ってくる

・小説の初版は4,000~5,000部

・ビジネス書の初版も小説と同じだが、時流にのった企画は部数増も

・文庫は12,000部~15,000部と最も大きい初版部数

・初版部数は出版社の人間と著者しか知ることができない

・オリコンでランクインしている本は実売部数が公表されている